霞ヶ関からコンサルティング、そして中国のネットビジネスへ


伊賀「マッキンゼーを辞め、次は起業しようと考えた理由を教えてください」
 

金田「先ほど話したように、給与は上がっているのにほとんど使わないから、それなりのお金が貯まっているわけです。でも、それで億ションが買いたいのかといえばそうじゃない。
 

『自分にとって一番おもしろいお金の使い方はなんだろう?』と考えて、『このお金を投資して事業をやってみたい』と思いました」
 

伊賀「それはいいアイデアですね。たしかに興味のないブランドモノを買ってもしかたない」
 


<金田さんの会社が手がけるネット通販ページ>
 
 

★中国を選んだ理由★

 
伊賀「場所は、なぜ中国だったんですか?」
 

金田「いろいろあります。ひとつは、なんだかんだいっても、日本人のエリートにとって“海外”と言えば、今までは西欧、ニューヨークでありロンドンだったんです。
 

アジアの時代だというけれど、じゃあ『日本からアジアにエースが大挙して乗り込んでいるのか?』というと、必ずしもまだそうなってるわけじゃない」
 

伊賀「だから敢えて、アジアで勝負してみたかった?」
 

金田「先駆者になるほうがやる気がでますからね(笑) 
 
あと、就職の時もそうでしたが、自分がストレッチしないとできないことをやりたかったんです。アジアのなかでも中国を選んだのは、東南アジアは親日など文化的な背景や外資に対する受容度の高さもあって、勝てるイメージが湧きやすいと思えたので」
 

伊賀「むしろ最も混沌としてて、何が起るかわからない中国市場で成果を出してみたい、と考えたわけですね? ほんとにチャレンジ好きですね(笑)」
 

金田「それと、これは若い人にもアドバイスしたいのですが、敢えて言い切ってしまえば、『世の中を変える人になりたいなら、Growthを経験することが必須だ』とも思っているんです」
 

伊賀「たしかに今の日本だと、企業再生や、ネット化による効率化ビジネスのチャンスはあるけれど、中国やアジアのような高度成長市場を体験することは難しいですよね。
 

金田さんはビジネスパーソンとして、そういう成長市場を体験しないと学べないことがある、身につかないことがある、と考えているわけですね?」
 

金田「そうです。人は成長市場のダイナミズムにこそ、ものすごく鍛えられるんです。私もそれを今、日々体験中です(笑)」
 

<游仁堂の上海社員の皆さん>

 
 

★中国ネットビジネスの荒波で二転三転★

 

伊賀「まだ起業して2年ですが、既にいろいろと紆余曲折があったと聞いています。どんな感じですか?」
 

金田「ほんとにいろいろありますよね。マッキンゼーを辞めてから、既に三転くらいしてるんです(笑)」
 

伊賀「2年で三転!? たしか最初は、日本デザインのアパレルを、中国でネット販売しようとしたんですよね? エンジェル投資家が出資してくれたと聞いていますが」
 

金田「そうです。ネットで本の販売が始まった時、『ロングテール戦略』と言われました。売れ筋の本だけではなく、一年に一冊しか売れないような本がたくさんある。でも在庫スペースが限られたリアルな本屋では、そんな本は置いとけないから一切売れない。
 

でもネットだと、そういう本も扱うことができて、一年に一冊しか売れない本でも、全部で一万冊あれば合計一万冊の売上になる、ということなんですが、アパレルでそれをやろうとしたんです」
 

伊賀「でも上手くいかなかった?」
 

金田「リアルな製造とか物流は中国企業がやっていて、日本側はデザインを担当し、売上に応じてフィーをもらうという形でスタートしたんですが、貰うはずのフィーが全然、入ってこない(笑)」
 

伊賀「笑ってる場合じゃないでしょ!? 何が起こってたんですか?」
 

金田「考えればあたりまえですが、ファッションには旬があるから、ロングテール戦略は無理なんですよ。不良在庫の山になっちゃう。実際、全然売れてないからフィーも入ってこなかったんです。それでこれはダメだとわかって(笑)・・」
 


<現在の中国オフィスの様子>
 
 

★巧くいかなかった日中協業★

 
伊賀「すぐに次のビジネスモデルに移るわけですね。二番目はなんですか?」
 

金田「中国のアパレル企業で、中国全土に数千店を持つ有望な会社があって、丁度IPO直後だったので、そこに日本のデザイナーをいれて、アパレルブランドを共同で企画からネット運営まで、全て一緒にやりなおすことになりました。
 

伊賀「その企業と出会ったきっかけは?」
 

金田「最初は人づてで知り合ったその企業の経営者に、いろいろアドバイスをしていたんです。その途中で『じゃあ、おまえに任せるからやってくれ』ってことになりました」
 

伊賀「そういうつながりで、すぐに仕事を任せてしまうのも、いかにも中国だし、いかにもベンチャーですね。で、それは上手くいったんですか?」
 

金田「最初は上手くいきました。でも途中から、中国チームと日本チームが上手く協業できなくなりました」
 

伊賀「日本側の外部の人間がデザインやシステムに大きく影響を与えて、中国側は従わざるを得ない・・・中国側から見ると下請け扱いされてしまうのに耐えられなかった、ということでしょうか?」
 

金田「仕事のやり方も違うし感情もこじれて、どんどん問題が大きくなりました」
 

伊賀「中国チームと日本チームの協業は、どこの業界でも難しいみたいですね。
 

日本と中国って、似てるように見えても市場も違うし、中国の商売人は日本人とは考え方もスタイルも違うから、上手くやっていけるようになるには、相当の年月とノウハウが必要な気がします。
 

それで今は何をやってるんですか?」
 

金田「今度は倉庫とかインフラも借りて自社で調達し、自分の会社でネット販売を始めているんですが・・」
 

伊賀「ですが・・・、なんですか(笑)?」
 

金田「全然売れません(笑)」
 
 

★テレビを信じない中国ではネットこそが民衆のメディア★

 

伊賀「当たり前と言えば当たり前ですね(笑)」
 

金田「でも、中国はネットの世界がすごくおもしろいんです。というのも、中国って知的な層、お金のある層がテレビを全く信じない社会なんです。だから、ネットにすべての言論ダイナミズムが集中している」
 

伊賀「そうか、たしかに、テレビや新聞は共産主義政権ががっちり押さえていますもんね。ネットもツイッターが使えないとか規制はあるけれど、それでも圧倒的に自由な言論スペースとして信頼されているわけですね?」
 

金田「もちろん過激な言論も含めてなんですけど、中国ではムーブメントや流行は、テレビではなくネットの掲示板コミュニティから生れるんです」
 

伊賀「わかった! それを利用してビジネスをやろうということですね?」
 

金田「そうです。アパレルのネット販売に留まらず、そういう『ネットでのムーブメントを起こす力』を利用したインフラビジネスをやるのが、おもしろいんじゃないかと考えているわけです」
 


<中国での仕事現場>

 
 

伊賀「おもしろそう! 中国ではテレビではなくネットがメディアの主役になるかもしれない。そのメディアコントロールを手に入れたいということなんだ。大胆かつ大きな目標ですね。
 

それにしてもまだ起業して2年なのに、ここまで話が変ってきたとは驚くほどダイナミックですね。自分の会社を経営すると、やっぱりコンサルタントとは全然違いますか?」
 

金田「それは痛感しますね。
 
私はマッキンゼーではパートナーになったわけだから、当時はマッキンゼーの経営メンバーのひとりだったわけです。でも、パートナーシップ組織の一パートナーと、株式会社で自分が最高経営者をやるというのは、天と地ほど違います」
 

伊賀「責任のレベルが半端じゃない?」
 

金田「強烈な自由度があり、強烈な責任を負っています」
 

伊賀「でも好きなことができるんだから、いいですよね?」
 

金田「というか、『好きなことをやる、やりたいことをやる』以外の選択肢なんて、ないんです。
 

社長になってからは、『やりたいことが見つからない』とか『やりたいことが、なかなかできなくて・・』という人の話を聞くと、なんか別の星の人の会話に思えるほど、概念が違う世界に生きていると感じます」
 

伊賀「やりたいことをやる、それしかないから、どこにも逃げ込む言い訳が見つけられない、というわけですね?」
 

金田「自分のやっていることは、自分で正当化しなくちゃいけない。そのために必死で走るだけです。かっこつけていられない(笑)」
 

伊賀「なんだか中国の商売人と話しをしてる気がしてきました(笑)」