英語を活かせる国際的な仕事? 40代で天職に巡り会うまで


伊賀「留学後は、マッキンゼーで3年くらい働いて、その後が製薬会社のノバルティス、そして、ネスレ、それから、現在の糸井事務所、という流れですか?」
 
篠田「ちょっとジョブホッパー(注:短期間にあれこれと仕事を変える人)みたいに見えますね(笑)。ノバルティスからネスレは転職ではなく、部門の買収に伴う異動です」
 
伊賀「留学直後、マッキンゼーを選んだ理由はなんですか?」
 
篠田「Whartonに留学したのに自分は金融が好きじゃないと気づき、Johns Hopkinsに留学したのに国際機関も向いてないとわかって、ちょっと困ってしまっていました(笑)
 

自分に合う仕事ってなんだろうと考え、マネジメント(経営関連)分野はおもしろそうかなと思ったんです。
 
ただ、これもやってみないと合っているかどうかわからないとも思ったので、マッキンゼーでは最初にサマーインターンをしています」
 
伊賀「その時の仕事が楽しくて入社を決めたんですよね。どういうところが合ってたんですか?」
 

<マッキンゼー時代の同僚達と>
 
 
篠田「組織がグローバルでフラットなところ、独自の価値観やプロフェッショナルファームとして確固たる矜持があって、かっこいい組織だと思いました。プロジェクトでは事業や企業の全体像も見られて学びも大きかったですね」
 
伊賀「ヘルスケア分野の仕事が多かったような記憶があります」
 
篠田「一緒に働くメンバーにも恵まれて、とても楽しかったです。でも・・」
 
伊賀「なんでしょう?」
 
篠田「最初はとても楽しかったんですが、実は私はマッキンゼーで生まれて初めて、『求められるレベルに達することができない自分と向き合う』という経験をしているんです」
 
 

★マッキンゼーで人生初めての挫折★

 
伊賀「マネージャーへの昇格に絡んでの評価ということですか?」
 
篠田「そうです。コンサルタントの仕事はとても楽しかったんです。でもたかだか2年で、さあ次はマネージャーになるために、これができないとダメだぞ、みたいにいわれる理由がよくわかりませんでした」
 
伊賀「あの組織は、そういうところ、ものすごく急がせますよね」
 
篠田「毎日の仕事はすごく楽しいし、早く昇格することには興味がない。なのになぜ、急いで上を目指さないといけないのか、当時は理解できていませんでした」
 

<篠田真貴子さん>
 
 
伊賀「今ならわかるということですね?」
 
篠田「マッキンゼーのコンサルタントとして、顧客に十分な価値を提供できるには、より高いレベルのスキルが必要で、そのスキルを身につければ、それがすなわちマネージャーへの昇格につながります。
 

それは、今ならわかることですが、当時はそこが腹落ちしていませんでした」
 
伊賀「自分が昇格することと、顧客の期待にこたえる価値を提供することがリンクしてると理解できなかったわけですね」
 
篠田「そうです。そこがしっくりこないまま、ただひたすらに、昇格するにはこういうスキルが不十分だといわれて・・」
 

伊賀「納得できないし、つらかった?」
 

篠田「私はマッキンゼーが大好きだったんです。その大好きな会社から、最初は『よくできるね』って褒められて嬉しかった。でもだんだん褒められることが少なくなって、ある時から『これじゃだめだ』って言われ始める。
 

ショックですよね。何かが変だと思うんだけど、どうすればいいかわからないし」
 

伊賀「こんなところを突っ込んで聞いてしまって申し訳ないです」
 

篠田「いえ、いいんです。これを伝えないとリアルな話にならないですから。あの経験もあっての今の私だということを、後輩達に伝えないといけないと思ってるんです」
 

伊賀「ありがとうございます。その後、たくさんの方にサポートされてマネージャーになるべくすごく頑張りましたよね」
 


<マッキンゼーの海外トレーニングにて>
 
 

篠田「本当に手厚くサポートして頂きました。周りの人がみんな『篠田をマネージャーにしてやろう』って協力してくれて。もちろん私も必死に頑張りました。
 

でも、結果としてはそれでも足りないと言われて・・。私はあの時34歳で、生れて初めて『あなたは不合格です』って言われたんです」
 

伊賀「はっきりモノをいう会社ですよね・・」
 

篠田「最後は本当に頑張ったので、ちょっと抜け殻というか、放心状態みたいな感じになりました。
 

転職するためにヘッドハンティング会社の人と会った時も、『自分が、何がやりたいかよくわからないんです』とか言ってました。今から考えればそんな状態でも拾ってもらえて、本当に幸運だったと思います」
 

伊賀「しかも転職先のノバルティスでは最初、人事を担当されてたんですね? 人事の仕事にも関心があったんですか?」
 

篠田「特にこれがやりたいという分野が決っていなかったので、最初は全体が見られる人事をやってみてはどうかという提案をいただいたんです。ちょうど新しい戦略的な人事制度を導入するプロジェクトが始まるタイミングでもあったので」
 

伊賀「興味深いですね。私が採用や育成を担当してきたこともあって、人事分野の仕事をしたいという学生さんから、どういう会社に就職するのがいいかという相談をよく受けるんです。
 

でも、人事の仕事をやりたいからといって、人材関連会社に就職しなければならないということはないんですよね」
 

篠田「人事がやりたいなら、私はむしろ事業会社の本丸の部署でまずは働くべきだと思いますよ。だって、人事って組織にとってすごく重要なわけですから、一番大事な部分は社内で意思決定が行なわれます。外部の人材関連企業に依頼する部分がコアな業務であるわけではないんです」
 

伊賀「その通りですね。私も最初はコンサルタントだったからこそ、その採用や育成の担当になれたわけですし」
 
 

★出産・育児とキャリアの両立★

 

<第1子妊娠中の海外出張>
 
 
伊賀「ところで篠田さん、このあたりでお子さんも生れて、両立も大変だったのではないですか?」

 

篠田「時間のやり繰りに加えて、自分の成長スピードが遅くなっているのではないか、と悩んでいました。特に二人目が生れた頃は本当に大変で。私、ネスレの時には子どもをふたりつれて海外のコンファレンス(会議)に参加したりしてるんです」
 

伊賀「えっ! 一人で、二人の子どもを飛行機に乗せて海外の仕事につれていったんですか? お子さんが何歳の時ですか?」
 

篠田「4歳と生後3ヶ月です(苦笑)」
 

伊賀「篠田さん・・、ご実家とか、頼めるところはなかったんですか?」
 

篠田「たまたま日程が両親とも夫とも合わず、シッターさんに泊まり込みでお願いするのは経済的に厳しい。他の親族にも、さすがに二人の子どもを預かってくれとは言えないですよね」
 

<篠田真貴子さん>

 
 
伊賀「一定の期間だけ、仕事を離れて育児に専念しようと思ったことはないんですか?」
 

篠田「ないです。私はホントに働いていることが好きなんですよ(笑)
 
もちろん二人の子どが生まれてからは、仕事を唯一の優先事項にはできません。それでも、仕事を休んで子育てだけをしていたら、自分はどんどんおもしろくない人間になってしまう、と不安だったんです。だからできる限り早く仕事に戻りたかった」
 

伊賀「仕事の種類に関しては、合うこと、合わないこと含めてあれこれ体験しているけれど、仕事を続けたいという点に関しては全くブレがないですね」
 

篠田「小さい頃からそうでした。親にお小遣いをもらうのも苦手で、早く自分で稼ぎたいと思っていました。働く事も好きだし、経済的に自立していることも、私にとってはとても大事なことでした。そこは本当に昔から変らないですね」