子どもの頃の激しい“情報への飢餓感”が、メディアで働く原動力に!


伊賀「田端さんは、最初にNTTデータという大企業に就職されています。今の若い人にも、やっぱり最初は大企業に入るべきと考える人が多いようです。
 
その点についてはどう思われますか?」
 
田端「私自身、最初に大企業に勤め、その後にこうして満足できるキャリアを築いてきたので、最初に大企業に入るなとは言いません。
 
ただ、当時40人くらいしかいなかったヤフーに入社していれば、もっと大きなもの、全く違う経験が得られた可能性もあります。どっちかしか選べなかったのだから、どちらがよかったとは言えません」
 
 

★所属企業と一体化したプライドは変★

伊賀「田端さんはその後、大企業であるNTTデータを3年以内で退職し、転職されています。世の中では新入社員が3年で辞めることをよくないことのように言う風潮も強いのですが、これについてはどうですか?」
 

<インタビュー中の田端氏>
 
 
田端「転職することそれ自体は、良いことでも悪いことでもありません。ただ、今いる企業以外どこにもいけない、どこにも雇ってもらえないという状況には陥らないようにすべきですよね。それじゃあ、全く交渉力がありません」
 
伊賀「企業と個人は、交渉ができる対等な立場であるべきということですね」
 
田端「というか、私は創業者やオーナー以外の個人が、会社という概念に忠誠心をもって「尽くす」なんて、ナンセンスだと思っているんです。
 
一流企業に勤めている人に多いのですが、勤務先の会社と自分のアイデンティティや社会的なステータスを同一化してプライドを保つという心の在りようは、とても気持ち悪いです」
 
伊賀「個人が企業に“所属”する、というのも変な概念ですよね」
 
田端「そもそも会社って、具体的には何のことを指しているんでしょう? 株主ですか? 経営者ですか? 
 
会社それ自体は抽象的な概念であって、なんの物理的な実体もありません。プロジェクトの集合体であり、人間同士が協力して、円滑に仕事をなしとげていくための「ハコ」に過ぎないのです。
 
そんなものに過剰に心理的に依存して、後からリストラに遭って裏切られたとか、我慢してきたのに報われないなどと文句を言うのは、ほんとにナンセンスです」
 
伊賀「でも『そうやって組織に頼らず生きていけるのは、ごく一部の優秀な人達だけなのだ』という人もいますよね。それについてはどう思われますか?」
 
田端「個々人の能力に差があるのは否定しませんが、“優秀な人”という言い方は好きではありません。
 
今までは“優秀な人”と言えば、大学名がいいとか、司法試験に通ったとか、与えられた問題を早く解ける人のことを指していました。でも今からは確実にそうではなくなるように思います。」
 
伊賀「どんな基準になっていくのでしょう?」
     
田端「一言で巧くいえないのですが、自分から、セルフスタートで勝手に何かを始める行動力や発信力、批判されても反対されてもめげない、打たれ強さとか、そういうものだと思います」
  

<学生時代>
 
 
伊賀「地方出身だとか、大学名が一流じゃないとか、自分の条件が不利であることを嘆く人も多いのですが、何かメッセージはありますか?」
  
田端「私は地方に生れて、ずっと最先端の情報に飢餓感を持っていました。東京に住んでる人のことを羨ましく思う時期も長かったです。
 
ただ、今から思えば、それが今、メディア企業で働くことになった原動力だと思うんです。
  
よく言われることですが、モテない人がすばらしい恋愛小説を書いたりする。飢餓感や欠乏感が原動力になって高い成果を上げることにつながる。そういうことはよくあります」
  
伊賀「自分が持っていない素養や環境条件を恨めしく思ったり、卑下する必要はないということですね?」
  
田端「その通りです。そもそも地方だろうが貧乏だろうが、今の時代の日本に生まれて、自分で何かをやっていく術が見つけられないなんてありえないです」
  
伊賀「しかも今の若い人は、最初からインターネットにつながっていますし」
  
田端「リクルートで事業投資の仕事をした時に確信しましたが、世の中で大事なことは、ほとんどが公開情報の中に埋もれています。しかも今はネットによって、誰でもそれらの情報にアクセスすることが圧倒的に簡単になりました。
  
世界でこれから起こることのすべては、なんらかその兆候が誰にでもアクセスできるところに現れていると思うべきです。重要な情報にアクセスするために、お金やコネが必要なわけではありません。
  
大事なのは、そういう情報に気がつけるかどうか、そして、その情報を解釈する思考力があるか、具体的な行動に一歩踏み出せる初期衝動なり、勇気を持てるどうかです」
  
伊賀「たしかに飢餓感があると、その兆候に気がつきやすいかもしれません」
  
ところで田端さんは、NTTデータ、リクルート、ライブドア、コンデナスト、NHN Japanと、最初の就職に加え、すでに4回の転職を経験されています。いろんな会社で働いたことで得られたことはありますか?」
  
田端「魚が水を意識しないように、ひとつの場所しか知らない人は、その場所の何がすごいのかわかりません。
  
地方にずっと住んでいると、我が町には立派な市立の美術館があります、大きなショッピングモールもあるんです、みたいなことを誇りにしてしまいがちですが、東京の人から見れば、そんなのショボイものだったりします。
  
その一方、外の人から見れば驚くほど美しい山並みがあったり、古い民家、伝統的な手法で作られる酒や料理があったりする。そういうものの価値に気がつけるかどうかは、外の世界を知っているかどうかに依るんです」
  

<NHN Japan のウェブサイト>
 
 

伊賀「仕事でも、いろんなビジネスや職場を経験することにより、その企業や事業の何がすごいのか、客観的に見られるようになるってことですね。いろんな国をみると日本の良さがわかるのと同じかも」
  
田端「私はいろんな職場を、バックパッカーのように放浪してきました。だからこそ見えるものも確実にあると感じます。
  
我が社は技術がスゴイのだと、さんざんエバってる会社もたくさんありますが、それが本当にその会社の一番スゴイ点なのか。本当はもっと他にスゴイ点があるかもしれない。でも、中にいると誤解してしまうこともよくあるんです」
  
伊賀「転職を繰り返して、次々新しいことにチャレンジするのは、リスクのあるキャリアのように思われがちですが」
  
田端「私の経歴を話すと、『すごくリスクをとって生きてきたんですね』とよく言われます。でも、私はずっと会社員です。自分の貯金を200万円かけて、ラーメン屋や喫茶店を開いている人の方がよほどリスクを負っていますよ。
  
会社員にとってのリスクなんて、最大でも首になることくらいなんですから」
  
伊賀「でもひとつの企業に何十年もいる人にとっては、首になるって死ぬほど怖いことなんですよ」
  
田端「そうなんでしょうね。私もリストラをする方の立場を経験しましたが、一度も転職したことのない人を解雇するのは、新生児を街角に置き去りにするような残酷な面もある行為だとも感じます」
  
伊賀「40代、50代まで新生児のまま成長してないってことが問題のような気がしますけど・・」
  
田端「当時もリストラする時は僕なりに心に重いものを感じました。でも振り返ってみれば、解雇された人全員が不幸になり、ずっと泣いて暮らしているわけではありません。
  
中には、給与が上がった人もいるし、別の場所で、より自分に合った仕事を見つけた人もいます。あの時は酷いことをしているように感じたけれど、終わってみれば人生そんなもんかと思う自分もいました」
  
伊賀「市場原理を通じて人材の適材適所が進めば、メリットがあるのは企業だけではない、ということですよね。
 
 

★ビジネスのリスクを怖がるな★

最後に、これから就活する人へのメッセージもいただけますか?」
  
田端「実は私、最初の就活の時にはリクルートを落ちてるんです」
  

<LINEで大人気のキャラクター達>
 
 
伊賀「それは意外ですね。大学時代の様子を聞いていると、リクルートがすごく好みそうな学生さんだった気がしますけど。何か理由があったんですか?」
  
田端「よくわかりません。どのステージで誰に落とされたかもよくわからない」
  
伊賀「就活って、そういうこともよくありますよね」
  
田端「その通りです。だから就活で絶対通ると思っていたのに落ちたとか、そんなことをいちいち気にする必要はまったくないんです。単なる巡り合わせなんですから。
  
それよりも私は、学生らに『どんどん自分を発信しろ』って言ってるんです。でも案外、みんなやらないんですよね」
  
伊賀「発信って、ネット上でということですか?」
  
田端「大学生には、実名で顔出ししてブログやツイッターで発信しろと、常に勧めてるんです。でもそうアドバイスしても、実行に移す学生は多くありません」
  
伊賀「なぜでしょう? 恥ずかしいとか、炎上するのが怖いとかでしょうか」
  
田端「炎上なんて、経験してどんどん学べばいいだけですよね。炎上が怖くてブログが書けないなんてナンセンスです。何の失敗も経験せずに学ぶことはできません」
  
伊賀「アメリカの起業家教育でも『できるだけ早く失敗しろ』というのは、よく言われることです。失敗からこそ、忘れられない学びが得られるということなんでしょう」
  

<田端信太郎氏>
 
 

伊賀「ところで田端さんは、これからどんな仕事をやっていきたいと考えていらっしゃるんですか?」
  
田端「 自分がやらなかったら起こらなかったであろうことをやりたいですよね。ビジネス上のリスクなんて、万が一でも死ぬことはないわけですから、それほどではありません。
  
自分の人生なんだから、やりたいこと、楽しいことを思い切りやって楽しむべきです。“人生は死ぬまでの暇つぶし”だと思えば、別に失うモノなんてないんですから」
 
伊賀「そのとおりですね。今日は長い時間、本当にありがとうございました。今後益々のご活躍に期待しています!」
  
田端「こちらこそ、ありがとうございました!」