”公の仕事”を目指し、敢えて選んだ“別の道”


伊賀「留学の経緯について教えてください」
 

出島「英語が苦手だったので、早いうちに海外でまとまった期間をすごしたいと思っていました。
 
最初はマッキンゼーの海外支社に行きたいと思っていたんですが、サブプライム問題が起きて仕事が少なくなったので、ビジネススクールに行って来いと言われて・・」
 


<インタビュー当日>

 
 

伊賀「留学先が香港やインドというのは珍しいですよね? 出島さんが留学した香港科学技術大学は、今はランキングも上がっていますが、当時はそんなにメジャーなプログラムではなかったし」
 

出島「その点は、欧米に留学した先輩の話も聞いていろいろ考えました。最終的には、これからの時代はアジアを知っておいたほうがいいと思って香港で学ぶことにしたんです」
 

伊賀「思い切った判断ですね。留学なら欧米の一流スクールと、ブランドにこだわる人が多いのに」
 

出島「当時から、欧米の一流ビジネススクールを出た人がマッキンゼーに大挙して応募してきていました。だったらすでにそこで働いた自分にとって、そのスクールの名前を得ることがどれほど重要なのか、疑問にも思いましたし」
 

伊賀「けっこう冷静に計算してるんですね(笑)」
 
 

★中国とインドでの学生生活★

出島「加えて、香港科学技術大学のMBAでは奨学金がもらえることになり、授業料がほとんど無料になったのも決め手になりました。それならマッキンゼーに留学費用を出してもらう必要がないので」
 

伊賀「会社にお金を出してもらうと、MBA修了後すぐに会社に戻る必要があるけれど、自費で留学できればすぐに会社に戻る必要がないから、ですね?」
 

出島「そうです。当時、MBA留学の後、数年間は外で働いてからマッキンゼーに戻りたいと思っていました。奨学金で留学できるとそれが可能になるので、そっちに決めました」
 

伊賀「たしか最初は北京に半年間、語学留学をしたんですよね? どんな学校に行ってたんですか?」
 


<香港に留学中、友人のアパートにて>
 
 

出島「最初に行った語学学校は、先生が前の方で講義をしてて、何十人かの生徒が黙って聞いているという、日本の学校みたいな形式だったんです。
 

でも、これじゃあ上達しないと思って、現地で外資系企業が経営してる実践型の語学学校を探して転校しました。加えてホームステイも始め、短期間で日常会話ができるくらいまでは持っていきました」
 

伊賀「初めての中国生活なのに、現地でどんどん積極的に“問題解決する姿勢”がエライです(笑)」
 

出島「 25,26歳くらいまで、自分はずっと受け身でした。勉強はよくできたけど、周りがお膳立てしてくれた舞台で力を発揮していただけともいえます。
 

でも働き始めてからは、自分の人生においては、自らリーダーシップを発揮しないと何も始まらないんだということが、よくわかりました」
 

伊賀「私の本、『採用基準』のメッセージそのままですね。ありがとうございます(笑)」 
 

<ソフトボールチーム、キャプテンとして旗を持つ出島さん>
 
 

伊賀「当時の中国はどんな印象でしたか?」
 

出島「日本にいると中国は急速に経済成長していると聞いていたけど、行ってみると、全体としてはまだまだ本当に貧しいんだとわかりました。でも成長率が高いからみんな希望に溢れているんですよね」
 

伊賀「日本の高度成長期も同じような感じだったんでしょうね」
 

出島「成長ってものすごく大事です。日本は安定してて、完璧なほどに快適です。でも、『だからもう成長しなくていいんだ』と思ってしまったら現状維持もできなくなる。成長することの意味も痛感しましたね」
 

伊賀「そのあとが香港科学技術大学で一年半のMBA、その途中で三ヶ月、インドのビジネススクール、Indian School of Businessに交換留学してるんですね」
 

出島「アジアの成長エンジンである中国とインドを見ておきたいと思ったので」
 

伊賀「香港とインドのビジネススクールは、何か違っていましたか?」
 

出島「香港の学校は世界から学生が集まっているし、当時はまだそんなにレベルが高くなくて、勉強自体は簡単でした。
 

でもインドの方はものすごいエリート校で、しかも生徒は99%がインド人。彼らにとってこの学校に来るのは“インディアン・ドリーム”なんです。中には天才的にすごいインド人もいて驚きました」
 

<インドでのMBA生活より>
 
 

出島「しかも私は、そこでの成績が悪いと交換留学の単位が認めてもらえないので、お尻に火がついていて(笑)、必死で頑張りました」
 

伊賀「インドはIIT (India Institute of Technology)という理系の大学が有名ですが、今はそこを出た後、出島さんの学んだISBを卒業するというのがエリートの王道になっていると聞きました」
 

出島「しかもインドのエリートは、小さい頃から英語で教育を受け、アメリカのテレビや映画を見て育っているので、最初からグローバルリーダーとしての教育を受けてます。
 

ディスカッションの方法とか、リーダーシップのとり方とか、いつアメリカに移住してもまったく困らない」
 

伊賀「香港の学校で会った中国の人たちはそうではなかった?」
 

出島「中国の教育は、いまのところ日本以上に詰め込みというか、暗記や知識重視だから、その点でインドとは全く違います」
 

伊賀「それじゃあ香港の方は、すでにコンサルタントとして4年も働いた出島さんには物足りなかったのでは?」
 

出島「そうですね。それで最初はチームプロジェクトをやっていても、すぐに私がリーダーシップをとってチームメンバーに仕事を割り振り、『はい、あなたはデータを集めて、はい、君はこの資料を作って』みたいな感じでした。
 

でも途中で気が付いたんです。自分は語学を勉強し、海外で仕事をする方法を学びにきたのに、こんなやり方では語学さえまったく上達しないって
 

伊賀「そうか。授業のレポートでいい成績をとることより、英語でグローバルチームを率いる訓練自体のほうが貴重ですよね」
 

出島「そうなんです。なので途中からやり方を変えました。
 

みんなでディスカッションしながら成果物を作っていく。上から指示するんじゃなくて、動機づけて、ひとりずつのいいものを引き出して、成果につなげていく。
 

でも、そういったやり方のほうが成果物のクオリティもよくなるんですよね。今の自分のリーダーシップスタイルの原型は、あそこで確立したと思います」
 

伊賀「リーダーシップって、そうやって学んで、自分のスタイルを確立していくものなんですよね」
 

<MBAの同級生とのJapan Trip>

 
 

出島「伊賀さんの本にもありましたが、リーダーシップって経験なんです。素質でもないし、カリスマ性でもない。経験し、訓練することで伸ばしていける。

 

このことはぜひ知ってほしいし、自分はリーダーに向かないなんて言ってないで、どんどん積極的に学んでほしいと思います」