”公の仕事”を目指し、敢えて選んだ“別の道”


伊賀「香港とインドへ留学した後の就職活動について教えてください」
 

出島「インドの成長ダイナミズムにも感動したので、日本企業のインド進出をサポートする仕事を希望していました。
 
中国進出支援を手掛けてるところはたくさんあるんですけど、インド進出支援は、まだまだこれからといった状況だったので」
 

伊賀「具体的にはどんな会社を受けたんですか?」
 

出島「短期間でもいろんな企業と働く経験が得られるコンサルタントが気に入っていたのと、日本企業の海外進出支援に特化した仕事をしたいと思っていたので、このときは日本のコンサルティング会社ばかり受けていました」
 

<インタビュー当日の出島さん>

 
 

伊賀「じゃあ希望通りの仕事につかれたんですね」
 

出島「とはいえ、履歴書審査であちこち落とされたんですよ。ちょうどリーマンショックの直後だったということもあるんでしょうが」
 

伊賀「そうなんだ!? でもそんなに苦労して希望通りの仕事についたのに、1年で広島県の職員に転職してますよね。このきっかけは?」
 

出島「マッキンゼーの大先輩に広島出身の人がいて、その人経由で、広島県の新しい知事が参謀となるスタッフを探してると聞いたんです。
 

最初の話では自分よりずっとシニアな人が求められてるようでしたが、まあダメ元で話を聞いてくださいって連絡したら会ってもらえて」
 
 

★そしていよいよ公の仕事へ★

伊賀「湯崎広島県知事ですね。知事は元通産相(現経済産業省)出身で、スタンフォード大学にも留学してるし、起業経験もおありになると聞いてます」
 

出島「知事からは、やる気があるのであればぜひ手伝ってほしいと言われました。もともと公務員志望だったし、民間企業の経営手法を行政組織に導入するという知事のやろうとしていることは、自分がずっとやりたいと考えていたことだったので、転職したんです」
 

伊賀「広島県では、経営企画の仕事をされているとか」
 

出島「広島県全体でいえば、ものすごい数のプロジェクトがあるんです。でも企業とちがって行政組織には経営企画とか、プロジェクトの全体を管理する仕組みや手法がありません。そういった仕組みを整備するのも私の仕事です」
 


<出島さんが携わる広島県の事業管理システム構築について>
 
 

伊賀「行政組織にはすんなり溶け込めましたか?」
 

出島「東大法学部卒で、外資系企業とか、MBAとか経歴が経歴なので、それだけで一目置いてもらえるところもあります(笑)」
 

伊賀「なんだかよくわからないけどスゴイ人に違いない、みたいな感じですね(笑)」
 

出島「もちろん、いかにも外資ファームっぽい行動とか、海外帰りが強調されすぎないよう気を付けてもいます。
 

知事はNPVやDCFを使った収益シミュレーションや予算管理など、民間企業の経営管理手法を行政にも導入しようと考えてるわけですが、そんな言葉を初めて聞く職員の方は面喰いますよね。だから自分が役にたてるんです」
 

(伊賀注:NPVやDCFは将来キャッシュフローを予測、割り引いて、財務的にプロジェクトを評価する手法。民間企業、特に外資系企業ではよく使われるが、行政組織では普及していない)
 

伊賀「それはやりがいにつながりますね」
 

<広島県にて行政と民間企業の連携を推進>
(左側が湯崎広島県知事、右側は西カゴメ社長)
 
 

出島「正直言って、マッキンゼーで働いていた時は、自分が倒れてもいくらでも代わりがいると思えました。でも今はそうじゃありません。それはやりがいにつながります。
 

あと、知事という最終意思決定者の近くで働けるのも楽しいです。自分が設計した仕組みが実際に運用されて、ちゃんとリアルにインパクトを出していることが確認できるわけですから」
 

伊賀「出島さんは小さい頃から公務員が夢だったわけですけど、巡り巡って行政分野の仕事をしているわけですね」
 

出島「行政って、民間企業に比べたらまだまだ生産性は必ずしも高くない。反対に言えば、改善の余地はスゴく大きいし、できることはたくさんあります」
 
 

★目指すのは行政のプロフェッショナル★

伊賀「市長や知事になりたいと思いますか?」
 

出島「政治家になることに興味はありません。それより、行政の生産性を向上させるためのプロフェッショナルスタッフを目指しています」
 

伊賀「最近は地方自治体の首長選挙で、リーダーシップと志のある人が当選するケースが増えているので、出島さんのような人へのニーズも高まっているのではないですか?」
 

出島「そういうこともあって、今年から岡山県でも働かせていただいています」
 

<日本三名園のひとつ、岡山後楽園>
 
 

伊賀「広島県と岡山県の両方で働いているんですね。
 

今後の話ですが、地方ではなく、中央の行政サービスに関心はありますか? 霞が関でも将来は、事務次官など行政トップは政治任用される時代がくるかもしれません」
 

出島「そうなった時に自分の力が発揮でき、役にたつなら、という感じでしょうか。あまり先のことは考えていません。
 

今、目の前にやるべきこと、できることがたくさんあるんで、まずはそれをきちんとこなし、着実に成果を上げていきたいですね」