”公の仕事”を目指し、敢えて選んだ“別の道”


伊賀「ここまでお聞きしていて、出島さんはキャリア選択において、すごく意識的だし選択的、戦略的だと感じました。
 

パブリックな分野で仕事をするという目標は、小学校の頃からまったく変わっていない。でもそのためにどんな道を選ぶべきか、という点については、既存の“よくあるパターン”に流されず、自分で考えたうえで意識的な選択をされてます」
 

<当日の出島さん>
 
 

出島「具体的にはどの選択のことですか?」
 

伊賀「最初の就職の際に、これからは官と民の役割が変わるかもしれないと考え、公務員志望だったのに敢えて最終目標である行政部門を選びませんでした。
 

東大とマッキンゼーで、もう十分に“いい大学、いい会社”の名前は揃った。だから留学する学校は欧米の一流校じゃなくて、中国とインドにしようとか。
 

それぞれの選択がすごく意識的で戦略的だと感じます」
 
 

★リスクをとって大きな成果を★

出島「でも、ちょっと日和ったりもしてるんですよ。インドのビジネススクール(ISB)では、私は日本人では珍しい交換留学生でした。
 

ところが翌年には、ある日本人の方が、日本人として初めてその学校に正規入学しています」
 

<インドの祝祭Diwaliにて>
 
 

出島「私のほうが一年早く“日本人初”になれる可能性があったのに、インドと中国の両方に行こうと考えたためにそれを逃しました。99%がインド人という学校に突然飛び込むのは、ちょっと怖かったのかもしれないと今では思います」
 

伊賀「もう少し勇気があったら、日本人初の学生になれたんですね」
 

出島「だから若い人たちには、リスクをとれ、保険をかけるなといいたいですね。

 
会社に籍を残したまま派遣で留学するとか、紐付きで他の会社に出向するとか、そんなことするより思い切って転職したほうが得られるものは圧倒的に大きいと思います」
 

伊賀「なぜリスクをとると得られるものが大きいんですか?」
 

出島「キャリア上でリスクを取らない人って信用されにくいんですよ。これまでの自分も、広島県にしか籍がないという状態で働いてきました。だから信頼してもらいやすいと思うんです」
 

伊賀「お前はいつでもマッキンゼーに戻れるんだろと思われたら、仕事にならないってことですね」
 


<Indian School of Businessの仲間と>
 
 

出島「自治体には大企業から出向してきている人もたくさんいますが、そういう立場だと、仲間として認めてもらうためにすごく苦労します。だからリスクをとったほうが、実は成果が出しやすい」
 

伊賀「そういえば、出島さんって子どもの頃は神童みたいだし、その後も順風満帆ですが、留学後の就職活動では履歴書審査であちこち落ちたって言ってましたよね。
 

キャリアに保険をかけたがる人って、『成功している人はみんな優秀だから、失敗しない。だから保険をかけずに済むんだ』と考えてるけど、そうじゃない
 

出島「けっこう有名な会社から軒並み落とされました(笑)」
 

伊賀「どんなに優秀そうに見える人でも、もしくは、順調にキャリアを積んできたように見える人でも、失敗したり落とされたりしてるんですよね。でも、失敗しても死ぬわけじゃないし、人生が終わるわけじゃない。そこのところは是非、多くの人に伝えたいです。
 

就職活動でリスクをとって失敗したら人生終わりだと考えてしまうと、保守的な選択ばかりすることになって、ホントにもったいないです。
 

他にも、高校生の頃の自分、大学生の頃の自分と同じような境遇にいる後輩に、伝えたいことはありますか?」
 

出島「周りに振り回されずに、自分の信じる道を選べってことでしょうか。
 
 

★自分の信じる道を進もう★

出島「AかBかと道を迷っている時、多くの場合、自分がやりたいのはAだということは、わかってるものなんです。でも周囲の人たちが『Aの道は危ないぞ、不安だぞ』って脅かす。すると、AじゃなくてBにしようかと迷い始める。
 

でも、そういう場合、ぜひAを選んでほしい。自分の人生なんだから、周りに振り回されるのは不毛です」
 

伊賀「出島さん自身がそうしてこられたということですよね」
 

ところで、日本の地方行政についてはさまざまな議論がありますが、出島さんのお考えを聞かせていただけますか?」
 

出島「広島も岡山も、日本の地方はすごく可能性があります。リーダーシップの総量さえ大きくなれば大きく飛躍できます」
 

<平和記念日の広島。灯籠流しで犠牲者を慰霊>

 
 

伊賀「トップのリーダーシップだけではなく、組織の中からリーダーシップをとる人がたくさん出てきて、その総量が大きくなることが大事だってことですね」
 

出島「地方行政においては、知事や市長など、トップのリーダーシップはもちろんとても重要です。
 

でもあれだけ複雑な組織、数多くのプロジェクトを行っている組織体をひとりで変えるなんて誰にも不可能です」
 

伊賀「そうなると、出島さんのように地方行政の生産性を上げるという分野に特化したプロフェッショナルが、今後はもっとたくさん必要になりますよね?
 

議員インターンと同じように、行政インターンとか、そういう人を育てる仕組みもあってもいいのかもしれない」
 

出島「たしかにそれも必要ですね。あと、たとえ行政などパブリックな分野で働くにしても、市場に身を置くことはとても重要だということも伝えておきたいですね」
 

伊賀「具体的にはどういうことでしょう?」
 

出島「自分の評価が上司のみによってなされる職場では、上司の期待すること,上司の喜ぶことをやるインセンティブが働きます。
 

でも、顧客や、行政の場合であれば住民や域内の企業・団体から直接に支持してもらえたり、反対にダメ出しをされたりすれば、素直に喜んだり反省したりできる。よりよいものを提供しようという動機づけにもなります」
 

伊賀「市場からの声を直接に届ける仕組みは行政でも役にたつし、可能だと?」
 

<インタビュー当日の出島さん>
 
 

出島「行政でも工夫次第で、市民の声を直接届ける仕組みを作ることは十分に可能です。
 

仕組みがおかしいと、おかしな方向に動機づけが行ってしまう。それを一つずつ直していくのが、今の自分の役目だと考えています」
 

伊賀「大変よくわかりました。いろいろ無関係にも見える仕事や場所を経験をしながら、最終的にきちんと小学校の頃から考えていた行政の仕事に就かれているというのがすばらしいです」
 

出島「ありがとうございます。パブリックな仕事に関心がある若い人たちのキャリア形成に、少しでも役に立てたらとても嬉しいです!」