波瀾万丈のグローバル転職キャリア形成記


伊賀「マッキンゼーに入ってただでさえ大変な苦労をしているのに、さらに海外オフィスに行けと言われたんですよね?」
 

白鳥「入社して 1年くらいでクリーブランドに行けと言われ、地図で調べたら見事に何もないところで驚きました。でもその話は流れて・・」
 

伊賀「その後に、シカゴに行く話がでてきたんですね」
 

白鳥「 2回目だったので心の準備もできていました。こういう会社で働いていると、いきなり海外で働くこともあるんだなって。
 

当時、製造業を担当していたパートナーから、『シカゴに、オペレーション関連で若手コンサルタントを育成する機会を作るから行ってみてはどうか』と言われて」
 


<高層ビルが有名なシカゴのダウンタウン>

 
 
伊賀「初めての海外居住ですよね?」
 

白鳥「日本でようやくマッキンゼーにも慣れ始めていたのに、再度、地獄ですよ(笑)」
 
伊賀「地獄、地獄ってオーバーですよ(笑) でも確かにコンサルティング会社って、つらくて直ぐ辞めちゃう人もいますよね? 白鳥さんはそんなこと言いつつも辞めなかった。なぜでしょう?」
 

白鳥「新しいことをやってみて上手くいかない時、『これは自分に合わない』と決めつけるのは簡単です。でもそれだと成長しないし、変われないですよね。だから頑張りました。つらかったし最初は空回りしてたけど、負けず嫌いなんです」

 

伊賀「小さい頃からずっと、“負けず嫌い”な性格が白鳥さんの成長の源泉だというわけですね。でも、シカゴでも辛い日々が?」
 

白鳥「最初のプロジェクトが大変でした。アメリカでは日々のディスカッションで価値のあるアドバイスが求められるんです。英語力のハンディもあるから、そこが難しい。どうやって価値を出せばいいか、皆目わからずに最初のプロジェクトを終えました」
 

伊賀「軌道に乗り始めたきっかけは?」
 

白鳥「 2番目にシリコンバレーでプロジェクトをしたんですが、この時のパートナーがすごく励ましてくれたんです。私の仕事を褒めてくれ、『おまえはいいことを言ってるんだから、もっとどんどんクライアントの前で話せ。自信を持て』と言ってくれました」
 

伊賀「それで上手くいき始めた?」
 

白鳥「少しずつクライアントやマネージャーに評価されることも増えてきて、『こうやって価値をだせばいいんだ』とわかり始めました。
 

求められているもののイメージがわかったら、それを提供すればいい。そのレベル感がわかるまでがつらかったです」
 


<マッキンゼークアラルンプールオフィスにて>

 
 

★ストレッチし続けるマッキンゼー・ライフ★

 
伊賀「よかったです。それでその後は順調に?」
 

白鳥「それがマッキンゼーの厳しいところなんですけど、あそこは一瞬たりとも人をコンフォートゾーンに置いてくれない会社なんです。常にストレッチさせる。だから常に辛い(笑)
 

コンサルタントとしてようやくいけそうになってきたら、今度は『ジュニアマネージャーの役割をやれ』と言われて・・」
 

伊賀「マネージャーに昇格する前に、マネージャー役をやってみろという段階ですね。しかもこの頃から、製造業じゃなくて小売業の仕事も始めてますよね?」
 

白鳥「はい。製造業ではトヨタの生産方式を中心に、日本で生産性向上、オペレーション改善のプロセスが確立されました。アメリカはそれを理論化して製造業に当てはめ、後にはサービス業にも適用しようとしていました。理系的なアプローチを文系的な職場に持ち込んで、生産性を上げようということですね」
 

伊賀「白鳥さんのバックグラウンドからだと小売業はかなり遠いと思いますけど、楽しかったんですか?」
 

白鳥「おもしろかったですね。大手の小売業では売上が瞬時に記録されるPOSデータが整備されていますから、仮説をたてて何らかの工夫をすると、成功でも失敗でもすぐに数字となって表れます。
 
結果がすぐにわかるので、それを元にまた次のアクションへとつながる。そういった、ビジネスをどんどん変えていくスピード感が今までにない心地よさでした」
 

伊賀「その楽しさが、今の白鳥さんのキャリアにつながってるんですね。
 

シカゴから日本に戻ってからも小売業を担当していたんですか?」
 

白鳥「いえ、2007年にシカゴから日本に戻ってすぐマネージャーに昇格したんですが、その後もドバイで働いたり、アジアの他国で働いたり、海外のプロジェクトが多かったです」
 


<ローマにて>
 
 
伊賀「えっ? シカゴから戻ってドバイ? 忙しい会社ですねえ」
 

白鳥「マッキンゼーはホントのグローバルファームなんです。ドバイのプロジェクトでも、パートナーはエジプト人、私がマネージャー、メンバーはスウェーデン人、ポーランド人、ベネズエラ人で、クライアントはアラブの企業・・・」
 

伊賀「この頃でもまだ入社して 3年くらいですよね? 入社当初は周りの日本人が英語を話すといってビビッていたのに、信じられない変化ですね」
 

白鳥「自分でも驚きます。アラブの男性って頭から白い布をかぶり、黒い“わっか”を付けてるの、ご存じですよね? そういう人がずらーっと並んでいる役員室で、エジプト人と日本人とスウェーデン人とポーランド人が、通信事業について提案をする(笑) マッキンゼーに入った3年前には想像もできなかった光景です」
 

伊賀「白鳥さんにはマッキンゼーが合ってたんですね」
 

白鳥「あそこには懐の深さがありますよね。細かいことを指示しない。おまえに任せたと言ったら、とことん任せて貰えます。信頼されると人間は頑張ります。そういう、いいスパイラルを経験できました」
 
 

★小売業の経営の世界へ!★

 

伊賀「それは何よりでした。ところでその後、また小売業に戻るきっかけは何だったんですか?」
 

白鳥「ある日、小売りチェーンのプロジェクトが始まるという情報を耳にしたんです。それでふとアメリカ人の担当パートナーに、『私はシカゴで小売りのプロジェクトをやった経験があるから、必要ならアドバイスするよ』ってメールを送ったんです」
 

伊賀「そうしたら?」
 

白鳥「メールを送った 3分後くらいにパートナーから電話がきて、『ちょっと話そう』って。それで彼の部屋に行ったらすぐ、『アキラ、おまえこのプロジェクトのマネージャーをやれ』って(笑)」
 

伊賀「そのプロジェクトがおもしろかった?」
 

白鳥「そのパートナーは、クライアントのアメリカ人 CEOとはよく話をしていましたが、日々のオペレーションの責任者である日本人 COO (Chief Operating Officer) をはじめ、主要な経営メンバーとは、私が信頼関係を築くという形でプロジェクトが進んだんです。
 

だからプロジェクトの大半のことについて、自分自身が意思決定のリーダーシップをとることができ、それがやりがいにつながりました。もちろん成果もきちんと出せたし、自由にやれるって、こんなに楽しいんだと思いました」
 


<Associate Principalへの昇格祝いの花束>
 

 
伊賀「上り調子ですねえ。でもなぜマッキンゼーを退職することにしたんですか?」
 

白鳥「マッキンゼーも今や大きな組織なので、『パートナーを目指しましょう』という段階に入ると、海外パートナー何名と働けとか、それなりに細かい評価基準を意識しなくちゃいけない」
 

伊賀「それがつまらなく思えた?」
 

白鳥「マッキンゼーって、結果さえ出していればプロセスは任せて貰える場所です。でもパートナーになる時には、プロセスに関する指示も出るんですよね。『あれとコレをやって、自分はパートナーになる資格がある、という証拠を揃えなさい』みたいな。
 

プロセスについて指示されたのは、その時が初めてだったので驚きました。一時的なものだし、やってもよかったんですが、ちょうどその頃ヘッドハンターからイギリスの小売業の TESCOが日本で経営グループに入れる人を探してるという話が来て・・」
 

伊賀「コンサルタントではなく、経営者をやってみたいと思ったんですね。TESCOってイギリスで最大手のスーパーマーケットチェーンですもんね」