“高校生社長”の失敗から実践する地域再生のプロへ


 

伊賀「今日は高校生の頃から地域の活性化に取りくんでいらっしゃる木下さんにお話しを伺います。よろしくお願いします」
 

<聞き手 伊賀泰代>
 
 

木下「こちらこそよろしくお願いします」
 

<取材当日 オフィスにて>
 
 

伊賀「まずは小さな頃の話を教えてください」
 

木下「父は魚屋をやっていました。
 

父の兄弟が隣で八百屋と肉屋をやっていて、祖父の指揮の下、みんなで店では食品を売って、さらに仕出しでオードブルやら刺身の盛り合わせを作ったり」
 

伊賀「どこでですか?」
 

木下「埼玉県の戸田市です。実家は東京都の板橋区なんですが、店は戸田市にあったんです」
 

伊賀「東京のご出身なんですね。ご両親は今でも魚屋を?」
 

木下「いえ、父は40代前半の頃には魚屋をたたんで、地元の小さな建設会社の会社員になりました」
 

伊賀「なぜ?」
 

木下「『商売を始めるぞー!』と意気込んでいた祖父がその少し前に亡くなっていたのと、
 

さらにその頃はスーパーマーケットが普及しはじめ、八百屋や魚屋など個別のお店が廃れ始めていたんです。それで見切りつけたんでしょう」
 

伊賀「なるほど。お父様も時代の変化にあわせてキャリアを変えてこられたんですね」
 
 

★体の弱い内弁慶な子供時代★

 

伊賀「小さな頃はどんな子供だったんですか?」
 

木下「友達を遊びに誘うこともできないような引っ込み思案の子供でした」
 

伊賀「えっ? それはなぜ?」
 

木下「断られるのが怖くてです(笑)。今の私を知ってる人からは信じられないといわれますけど」
 

伊賀「確かに信じがたいです(笑)」
 


<小さな頃>
 
 

木下「体も弱くて、扁桃腺が腫れて2週間ほど学校を休むこともありました。

 

運動も嫌いだったんだけど、体を鍛えるために水泳に通わされ、おかげで今はだいぶ丈夫になりました」
 

伊賀「そんな引っ込み思案の子供が、いつこんな積極的な人に変わったんですか?」
 

木下「引っ込み思案といっても内弁慶で、学校でも学級会では発言しないのに、放課後には先生のところに行って意見を言う、みたいな子供だったんです。
 

そうしたら小学校5年生の頃、先生から『自分の意見はみんなの前で、自分で言わないとダメだ』と言われて」
 

伊賀「そう言われてすぐに変わったんですか?」
 

木下「実は先生が皆の前で、『木下君はどう思う?』と毎回、投げかけてくれるようになったんです。

 

それで話してみたら、けっこうみんなマジメに聞いてくれる。

 

そういう経験が積み重なって、少しずつ自分の意見を言うことの快感や意義を理解しました」
 

伊賀「その先生はすばらしいかも」
 


<小学校の頃 最前列 右からふたりめ>
 
 

木下「その後は調子こいて色々と発言するようになったのですが、

 

その先生から今度は、『木下君の発言や行動は他に大きな影響を与える。それは認識しておいたほうが良いよ』とも言われました。
 

それで、もっと考えて発言しなくてはならないと思うようにもなったんです。
 

その後、中学校の頃にはすっかり積極的になって、自分で企画を提案して取りまとめたりもしていました」
 

伊賀「でも、中学も高校もクラブ活動はやってないですよね?」
 

木下「なにもやってないです。
 

友達は多かったけど、当時から学校という狭い社会において先生の言うことだけ聞いていても仕方ないと思うようになってて、

 

何より学内より社会での活動に興味が出てきていたんで」
 

伊賀「学外の活動に興味を持ったきっかけはなんですか?」
 

木下「14歳の頃、中学生の男児が複数の子供を殺害して警察に脅迫状を送るという事件があったんですが、この犯人と私は同じ年齢だったんです」
 

伊賀「当時、メディアでも大きく報じられた事件ですね」
 

木下「はい。テレビ番組では FBI の分析官まで呼んできて、犯人像を推理させていました。

 

で、彼らは『これは中年男性の犯行ですね』とか言ってるわけです」
 

伊賀「でも逮捕されてみたら 14歳の犯行だった!」
 

木下「そのときに思ったんです。大人とかメディアの言ってることって必ずしも正しくないんだなって。
 

FBI の専門家でさえ適当なことを言ってるのに、学校の先生の言うことを 100%信じてちゃ本当のコトはわからないな、と確信したんですよね」
 

伊賀「あの事件で、大人の言うことを鵜呑みにしてちゃいけないと学んだんだ!」

 

木下「そうです。だからとにかく学外で何かをやりたかった。社会とつながり、自分で判断できるようになりたかったんです。
 


<小学校高学年の頃 マイクで話す木下さん>
 
 

木下「それで、ボランティアやスタッフを募集してる福祉団体や環境保護団体などに問い合わせて、活動できないか聞いてみるんですが、どこも高校生だと門前払いされるんです」
 

伊賀「たしかに、そういう募集ってたいていは大学生か社会人向けですもんね」
 
 

★一冊の本から★

 

木下「そんな時に乙武さんの『五体不満足』を読んだらその中で、乙武さんが早稲田の商店街の活動を手伝っていると書いてあって」
 

伊賀「私もあの本を読みましたけど、そんなエピソード、書いてありましたっけ?」
 

木下「小さなエピソードなんですが、私は学外での活動をずっと探していたので、その部分にピーンと来て。
 

その日のうちに早稲田の商店街のホームページを見たら「学生部 部員募集」って書いてあったので、本を読んだその日のうちにメールで問い合わせました」
 
 

 
 

伊賀「すんなり参加させてもらえましたか?」
 

木下「早稲田の附属高校に通っていると言ったら、商店会長に『それなら7年間、暇だな』と言われて(笑)
 

あと、乙武さんはちょうどその頃、本がベストセラーになって忙しくなり商店街の仕事を続けるのが難しくなって来た時期だったので・・・」
 

伊賀「倍率とか高くなかったのかな?」
 

木下「倍率どころか応募者は私だけだったみたいです。だから高校生でも、入れてもらえたんですよね。すぐに事務局の業務を担うようになりました」
 

伊賀「えー! あの本は 500万部も売れているのに、そのエピソードを見て、問い合わせをした人は木下さんだけ? 
 

本を読むだけじゃなく、サイトを確認しメールして応募してしまう。そういう一歩を踏み出す人は、案外少ないってことなんですね」
 

木下「そうです。だからこそ一歩踏み出して行動するだけで、可能性がどーんと広がっていくんです」