“高校生社長”の失敗から実践する地域再生のプロへ

 

伊賀「社長を務めた会社も去ることになって、大学の卒業時には就職活動をしましたか?」
 

木下「していません。大学 4年の 7月に社長を辞めたので、既に就活シーズンも終わっていましたし、
 

それに、まぁ組織に所属しなくてもどうにか食べていけるだろうとも思っていました。不安はゼロではなかったですが、どうにかなるだろうと。
 

どうにもならなかったら、知り合いの会社とか沢山あったので、そこに就職させてもらえればよいですしね」
 


<取材当日の木下さん>
 
 

伊賀「でもいきなり起業はせず、大学院で勉強を続けることにしたんですよね?」
 

木下「組織や経営について何も知らないまま社長業をやって失敗したので、大学院で理論を学んでちゃんと振り返えるのもいいんじゃないかと思ったんです。
 
社長を辞める時期がちょうど大学院入試の時期だったというのもあります」
 

伊賀「一橋の大学院は神田と国立(くにたち)の2箇所にありますが、どっちですか?」
 

木下「国立の方です。商学研究科で修士号をとりました」
 

伊賀「同期の学生の人数は?」
 

木下「50人くらいでしょうか。うち社会人が 40人くらい、学部を卒業して直接進学した学生さんが 10人くらいだったと思います」
 

伊賀「いったん働いてから大学院で学ぶ人のほうが多いんですね。
 

ところで木下さん、大学は全く授業にでていなかったわけですが、ここでは?」
 

木下「必須の授業もあるし、週に数本の経営に関するレポートをまとめるとかかなりハードなカリキュラムで、この時期は人生で一番、勉強しました」
 

伊賀「大学時代は政経学部で、政治学専攻ですよね? 今回は?」
 

木下「大学院では経営学を専攻し、修士論文では産業論をテーマにしました。
 

アメリカではみんなマネジメント(経営)の重要性を強調していたので、街作りに関わるにしても、政治や都市計画ではなく、企業経営の視点を学びたいと思いました」
 

伊賀「すごく実践的な考え方ですね」
 


<一橋大学院の卒業式>
 
 

木下「社長業をやっていた時の経験から、甘い見通しで仲間やお金を集めるべきではないとか、
 

みんなの意見をよく聞くというと聞こえはいいけど、全員が賛成する案を探し続け、ずるずる決断を先延ばしするのは一番よくないとか、
 

組織と経営の重要性を痛感していました。
 

そうした猛烈な失敗を経験してから大学院に進学したので、自分がやってきたことを体系的に整理し、失敗の原因、その克服方法などを冷静に分析することができました」
 
 

★熊本で最初のプロジェクト★

 

伊賀「大学院の卒業後、最初に手がけられたのは熊本の商店街の再生プロジェクトですね。なぜ熊本で?」
 
木下「もともと商店街ネットワーク時代に取締役を引き受けてくれていた人が熊本の商店街の人だったというご縁です」
 
伊賀「木下さんも熊本まで行かれて?」
 
木下「最初は勉強会を兼ねて二ヶ月に一度くらい現地を訪ねていました。
 

そこから、熊本でもプロジェクトをやろうという話になって、

 

私と地域活動仲間、それに地元商店街のメンバー 4名で、320万を出資して熊本城東マネジメント株式会社を立ち上げました」
 


<地方での事業検討の様子>
 

 
伊賀「こちらは順調に?」
 
木下「もちろん細かい苦労はいろいろありますが、お陰さまで 7期連続で黒字を続けていますので、全体としては順調に進んでいます」
 
伊賀「だとすると、他地域でも同じように上手くいく可能性があると?」
 
木下「そうですね。不動産管理やエリアマネジメントの手法は、他の地域でも大いに役立ちます。
 

日本国中、あちこちの商店街が同じような問題に悩んでいるのに、彼らには専門的なノウハウもないし、ビジネス的な発想も希薄なので、
 

私たちの手法を導入すれば、それなりに成功できるところはあると思います」
 
伊賀「今はその手法を木下さんの会社で集約し、広めていこうとされているんですね?」
 
木下「はい。民間主導で実績をあげた事例をレポートやメルマガとして販売したり、街興しの専門家の授業を動画にし、地域興しを学ぶための学習プラットフォーム(インフラ)として提供しています。
 

最近はブートキャンプといって、二泊三日の合宿形式で具体的なプランを練り上げるような機会も提供しています」
 
 

★高いスキルを持つ仲間と★

 
伊賀「今の働き方は?」
 
木下「2009年に一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス(AIA)という組織を立ち上げ、その代表理事についているのと、
 

全国各地、10箇所以上の地域で再生プロジェクトに関わっています」
 
伊賀「AIAは何人くらいの組織ですか?」
 
木下「自分の他、東京 2名、関西 1名の 4人でやっています」
 
伊賀「木下さんが採用した人達ですか?」
 
木下「いえ、今までの活動の中で知り合った仲間に声をかけて集まりました」
 
伊賀「みなさんの働き方は?」
 
木下「大崎にオフィスを借りていて、一週間に 2日は 3人ともオフィスに集って、関西からはスカイプで接続して、情報共有や方針策定を行います」
 

<AIAの仲間達と>
 
 

伊賀「ということは、それ以外の日はバラバラに?」
 
木下「私は月の 3分の 1は地方にいますし、それぞれ自律的に働いているので、自宅や他の場所で仕事をすることもあります。
 

今はネットがつながればどこでも働けますしね」
 
伊賀「このインタビューの主要な読者である高校生からすると、数人の会社で働くなんてすごく不安定なイメージを持たれそうですけど」
 
木下「高校生や大学生には今でも大企業で働きたい人が多いのかもしれませんが、
 

仕事のおもしろさ、収入、働き方の自由度、どれをとっても、今の形のほうが自分には合っていると思います」
 

私も他のメンバーも AIA 以外の仕事もしているし、自分で事業を立ち上げられる各分野のプロです。
 

そういう仲間で集まり、いろんな仕事をいくつか回した方がひとつの会社に勤めるより稼げるし、収入も安定します」
 
伊賀「たしかに最近は、大企業でも事業撤退やリストラを続けるところも多いし、決して安定しているとは言い難い」
 
木下「給料が上がらない時代と言われますが、こういう働き方なら自分次第で収入も増やせますので、大企業に勤めるより稼げますよ。
 

それに、会社が小さいと事務所も小さくて良いし、無駄な事務員もいらない。働かないのに解雇できないおじさんもいないですから(笑)」
 
伊賀「オフィスに集まるのが週に 2日だけなんて、自由度も高そうです」
 

木下「仕事を増やしてどんどん稼ぎたいのか、それとも、ワークライフバランスを重視して仕事を減らすのか。そういったことも自分たちだけでコントロールできる
 

それが、こういう働き方のいいところだと思います」